STATEMENT
元々、アメリカで起こったポップアートに憧れを持っていて、特に大量消費社会に対して批評性をもって広告や商品イメージを流用し作品化したアンディ・ウォーホルや、成功したウォーホルをシミュレーションしたリチャード・ペティボーンの流れに興味があり、作品やコンセプトを参照しつつ、その文脈を日本人である、森洋史がどうやって紡いでいくかということを熟考しています。
私の制作は、もっぱらパロディを手法として展開しており、1980年代に起こったシミュレーションアートやアプロプリエーションアートなどと呼ばれる手法を踏襲しながら表現を試みています。あえて既存のイメージを流用することで、鑑賞者へ既視感を与えつつ共感でも反感でも某かの化学反応を起こすことを目的としています。
最近取り分け注力しているのは、幼い頃に慣れ親しんだテレビゲームやアニメなど数々のサブカルコンテンツと、同時代にアメリカで起きたポップアートのシミュレーションです。渡来文化であるシミュレーションアートの手法を取り、消費し尽くされジャンク化していくサブカルチャーを美術表現として成立させられないかという試みです。
色褪せたサブカルコンテンツをサンプリング、半ば強引に別ジャンルのコンテンツと融合させ、新しいメディアによって絵画として表現した時、どんなものが生まれるのか興味があるのです。技法や材料について、現代の新しい工業テクノロジーやメディアを採用する意味は、コミックを美術にしたことで有名なロイ・リキテンシュタインの影響が強いです。彼は、ベンジャミン・ヘンリー・デイ・ジュニアが開発したベンディドットを応用し美術表現として昇華することに成功しました。つまり、当時の最新媒体と少し前の文明などに着眼して技術的なリミックスを行っていたことについて知った時、今の自分の制作スタイルに共通するものを感じました。素材であったり機械であったり、自分なりに活用出来そうなものを検証し、古いものと新しいもの両者に目を向け、掛け合わせて作ることに楽しさを見出しています。
私の作品のオリジナリティって何なんだろうと常に自問自答しています。シミュレーションアートの延長線上での仕事、言わば「アップデート」とでも言いましょうか、過去と現在を繋ぐ仕事と思っていて、イメージにおいてもコンセプトにおいてもさほど新しさやオリジナリティを追い求めているわけではないのです。もし言うなれば、自分の中にある、ある種の軽薄さ、節操のなさが織り成す、異物感が熟成した時にオリジナリティを手にすることが出来るかもしれないと考え模索を続けています。
偉そうに述べていますが、まだまだ未熟で煮詰まってもいない状態なので、説得力などあるわけ無いのですが、このように書き綴り、自分がどこに身を置き表現を展開していくのか、自問自答することによって、己の表現と対峙していく力を磨いていければと考えています。